d クラヴィコード(clavichord)[撞弦楽器] 付録H「歴史的文献」2「音楽大全」2.各論 (2)空気楽器以外 a.弦楽器 2.金属弦 1.鍵盤をもつもの 2.撥弦以外 i.撞弦 【参考】 撞弦機構:図2.22 プレトリウスによる外観図:図H.56 左上に「イタリア型」 下に2つ (脚がないものもあった?)       曲:J.S.Bach "Wohltemperierte Klavier Teil-1 Nr.1 Präludium und Fuge in C-dur"         (邦題:平均律クラヴィア曲集 第1巻の第1曲 前奏曲とフーガ ハ長調)BWV 846 の前奏曲部分.   演奏:ドルメッチ(Arnold Dolmetsch,ル・マン(仏)生まれであるがロンドンで活動した.姓名はドイツ語.1858-1940).古楽器復活運動の先駆者.  音楽史的には意味があるが音は悪い.   音源:Columbia Graphophone社 SP盤(78rpm)Percy Scholes(オルガン奏者.Oxford大の学者グループとレコード会社の橋渡しをした)編  "Columbia History of Music vol.2" Track 9   録音:Dolmetsch Foundation と Columbia社による協同  金属弦を両端の位置固定(調律のために張力は可変)で張って,その途中のどこかをタンジェントと呼ばれる金属片で突き上げ, タンジェントで2つに分けられる金属弦の片側を布などで制振し,他方を自由振動させて,その振動で音を出す. 響板はあるがブリッジがないので弦の振動が響板に有効に伝わらず,音は小さい. タンジェントは鍵盤のキーを押さえることによって突き上げられるが,突き上げの強さを変えることで突き上げ後にピッチを揺らす ことができる.チェンバロが出現するまでは,オルガンと並んで鍵盤楽器の代表であった. チェンバロの出現後もヴィブラートの可能な鍵盤楽器として使われたが,音の貧弱さによって徐々に衰退した. 演奏は古楽器復興運動(クラヴィコード,チェンバロ,ヴィオラ・ダ・ガンバなどの製作と演奏)の先駆者アーノルト・ドルメッチ. 曲はJ. S. Bachの"Wohltemperierte Klavier"()の 第1巻の第1曲「ハ長調 前奏曲とフーガ」の前奏曲部分である. 曲名の"Wohltemperierte Klavier"は,邦題では「平均律クラヴィア曲集」とされるが, 本来は「うまく調律されたクラフィア曲集である. バッハが意図した調律は,現在「キルンベルガー(バッハの弟子)音律」と呼ばれている音律,あるいは「ヴェルクマイスター音律」に 近いものであったはずと考えられていたが,全盛期の末にバッハの自筆譜の表紙に書かれた模様が調律を暗示しているのではないかという説 が提唱され,現在ではそれが有力視されている.     収録した演奏音は録音の古さのわりに雑音が少ないが,職人芸的な方法で手作業による雑音除去を行ったらしく,     所々で音そのものが変歪されたように聞こえる部分がある.      弦を突いて出すクラヴィコードの音と弦を引っ掻いて出すチェンバロの音の違いは,素人の耳には顕著な差には聞こえないが, クラヴィコードの音では強弱がついていることはわかる.ただし,クラヴィコードの音が実際にどれほど小さいかは 録音再生からではわからない.